清話会セミナー09/12:講演要旨⑤

今の時代こそ必要な税の知識と利益を生むしくみ

2009年12月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

利益を生むしくみは「組織」づくり

税について押さえてほしいポイントはひととおり説明しましたが、その知識を活かすには、皆さんの会社に「利益を生むしくみ」がつくられていなければなりません。そのしくみのつくり方について、いくつかのヒントを紹介します。

私が考える利益を生むためのしくみには、次の3つのポイントがあります。

①「感じて、考えて、行動する」
②「人脈づくりと人材育成」
②「経営計画をつくる」

①は、日ごろから売れるものやサービスを見つけるための「感性」を磨き、どうやったらそれを売ることができるのかを「考えて」、それを素早く「行動」に移すことです。

②は、人と人とのつながりを大切にすること。まずは、社内外を問わず、できるだけたくさんの人と情報交換を行うことです。多くの情報を得ることは、それだけ新しい商品やサービスを生み出す機会を増やします。
また、社内においては、人材育成を積極的に行わなければなりません。人材が育たなければ、生産性は上がらず、利益は生まれません。

③は、経営計画の捉え方です。
利益を出すための方法を徹底的に考えたうえで、計画をつくる姿勢を持ち続けることです。この3つのポイントをセットにして取り組んでいくことで、利益を生むしくみがつくられていきます。

勘のいい方は気づかれたと思いますが、これは「組織づくり」そのものですっ私が考える利益を生むしくみとは、付加価値を生み出せる組織をつくることにほかなりません。

そして、組織づくりの設計図ともいえるのが経営計画であり、経営計画を立てるために必要なのが決算書の分析です。

決算書は、いわば会社の健康診断書。それを細かく分析していくことで、会社のどこに問題があり、どう改善すべきかがわかるのです。

ただ、1つだけ注意してほしいことがあります。それは損益計算書ではなく、貸借対照表をもっとも重視することです。経営者は損益計算書を一番気にしがちですが、そこに記載されているのは、貸借対照表と連動した、具体的で詳細な「結果」です。

もちろん、結果から分析でさることもありますが、決算書の分析は「利益を生み出すための経営計画」をつくることが目的。そこには、新しいことにチャレンジしようとする前向きな思考(私はそれを「未来思考」と呼んでいます)が必要です。

貸借対照表には、経営者の考え方や在り様が表れています。例えば、表中の「資産の部」で同定資産の金額が大きければ、資本力があることがわかります。

一方、「負債・資本の部」で長期負債があれば、長期借入ができるだけの信用力があることがわかる。

そうして読み取ったことを組み合わせていくと、この資産と高い信用力を活かして何ができるのか、とイメージを膨らませていくことができます。ですから、まずはじっくりと貸借対照表を見てください。新しい発見があるかもしれません。

ともあれ、要は「結果」である損益計算書からではなく、経営者の考え方が見える貸借対照表から分析をはじめることで、

経営計画が前向き広利益を生み出そうとするものになるのです。

つづく

清話会セミナー09/12:講演要旨④

今の時代こそ必要な税の知識と利益を生むしくみ

2009年12月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

22年度税制改正で税負担はどう変わる

次に平成22年度税制改正について、皆さんに関係すると思われるポイントを紹介します

まず1つ目は法人税ですが、「租税特別措置の見直しで課税ベースが拡大した際には、企業の国際競争力や国際協調などを勘案しつつ、見直す」とされ、実質引き下げは見送られたかたちとなりました。

しかし、現在の日本の法人税古学は約41%と、ほかの国々と比較しでもトップの高さで、このままでは国際競争力の維持・強化が難しいばかりか、長期化する不況を脱出することも危ぶまれます。

実際に、国際競争力を維持・強化するため、イギリスやドイツ、カナダなど法人税率を10%近く下げている国もあります。ぜひとも見直しを期待したいところです。

2つ目は、中小企業の軽減税率について。現行の18%から11%への引き下げが民主党のマニフェストに明示されていましたが、こちらも「課税ベースの見直しによる財源確保などと合わせ、早急な実施に向けて検討」とされ、実質見送られました。

さらに、一定の設備を取得した場合に特別償却または税額控除が認められる情報基盤強化税制も、マニフェストには廃止と明示されていましたが、基本的には継続延長されています。

3つ目は、特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限の廃止。これは先に説明した役員報酬の「二重控除」を避けるために設けた制度でした。

しかし、役員給与の一部を損金に算入すこのることを認めない場合、それは法人経費となりません。そのため、法人税が課税され、さらに役員給与を受けた個人も所得税を支払う「二重課税」になるため、マニフェストに掲げたとおり廃止されました。

また、交際費の非課税枠や投資促進税制、少額減価償却資産の損金算入特例など、中小企業向けの租税特別措置の多くは、適用期間の延長がすでに決まつています。

そのほか、所得税で押さえておきたいポイントもあります。

平成22年度の子ども手当の導入を機に、15歳以下の子どもを対象とする扶養控除を廃止。23〜69歳が対象の成年扶養控除は維持し、16〜22歳が対象の特定扶養控除は、高校耐賠償化の恩恵を受ける16〜18歳に限って上乗せ分のみ縮小されます。住民税も同様の措置となります。

また、話題になっていた給付付き税額控除は「社会保障制度の見直しとあわせて検討を進める」とし、今回の導入は見送られました。

最後のポイントとして、住宅取得資金贈与の非課税枠が現行の500万円から1500万円へ大幅に拡大。不動産市場の活性化が景気の底上げにつながることが期待されます。

つづく

清話会セミナー09/12:講演要旨③

今の時代こそ必要な税の知識と利益を生むしくみ

2009年12月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

欠損金の繰戻還付と役員報酬の損金不算入

損金算入については、平成時年度税制改正で「役員報酬の損金不算入」制度が導入され、役員報酬は一部損金算入が認めらなくなりました。

その理由は、役員報酬を支払った企業が、その金額を損金算入することで法人経費とし、さらに役員報酬を受け取った個人が給与所得控除を受けることは、同じお金に対して「二重控除」になると考えられたためです。

役員報酬の損金不算入について詳細を知りたい場合は、特別な計算式などがありますので、顧問税理士に確認することをお勧めします。

特に、役員報酬が年間1500万円を超えている場合は、損金算入が一部認められない可能性が高いので、確認しておく必要があるでしょう。

ほかに押さえておきたいポイントとしては、「欠損金の繰戻し還付」があります。この制度は、平成4年以来ずっと凍結されていましたが、現在の経済状況を鑑みて復活しました。

簡単に説明すると、前期は黒字で今期が赤字になった場合、前期に納付した法人税額から還付金が支払われるという制度です。繰り戻しが可能なのは1事業年度だけですが、今期の赤字を少しでも補填したいと考えるならば、活用してみるのも1つの方法です。

また、2010年3月で、47の「租税特別措置法」が適用の期限を迎える予定になっています。いくつかの措置法については延長が予定されていますが、廃止が予想されているものもあります。自社で適用を受けている措置法で、期限を迎えるものがないか確認することをお勧めします。

つづく

清話会セミナー09/12:講演要旨②

今の時代こそ必要な税の知識と利益を生むしくみ

2009年12月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

軽減税率の引き下げと交際費等の損金算入

経営者の皆さんが思い浮かべる税といえば、まず法人税、そして所得税、消費税、相続税ではないでしょうか。ちなみに税は約50種類ありますが、私たち税理士が取り扱っているのも、それらの税に関することがほとんどです。

税には、国税や地方税、直接税、間接税など、さまざまな区分がありますが、それらは税の捉え方によって変わっているだけで同じ税を示している場合もあります。

例えば、どこが課税するのかで区分すると国税、地方税となり、誰に対して課税するのかと捉えれば法人税、所得税となります。どの時点で課税するのかで区分する流通税などもあります。また、課税対象者と納税者が同じであれば直接税、異なれば間接税と区分します。

ちなみに、日本ではじめて近代的な税が登場したのは、明治20(1888)年の所得税で、スタートした当時の税率は1〜3%だったそうです。その後、昭和15(1940)年に法人税が所得税から枝分かれし、昭和22年から申告納税のシステムがはじまりました。

さて、さまざまある税ですが、経営者にとってもっとも興味があるであろう法人税について、現在の税制で押さえておきたいポイントから説明します。

法人税は、企業の所得金額に対して課される税のことで、利益が出てはじめて発生する税です。経営者ならば、決算時期に顧問税理上から法人税申告書について説明を受けたことがあると思います。その際、法人税の計算は、決算書に記載されている「当期純利益」の金額に基づいて行われます。

法人税率は原則30%ですが、2009年4月から資本金1億円以下の法人については、年800万円以下の所得金額に対して、軽減税率が22%から18%に引き下げられました。

法人税は利益が出なければ課税されることはありませんが、会社を経営する以上、利益の追求を放棄するわけにはいきません。当然ですが、法人税率は引き下げられるに越したことはないでしょう。

資本金が1億円以下の法人については、「交際費生寸の損金算入」が認められることも、押さえておきたいポイントです。

これは、会社が支出する交際費を600万円の90%(540万円)を限度として損金算入することが認められています。

ただし、算入が認められていない残りの10%の金額については、法人税が課税されます。そのため、例え当期純利益が0円であっても、交際費で損金算入が認められない金額がある場合は、法人税を支払うことになります。この点は十分に注意してください。

つづく

清話会セミナー09/12:講演要旨①

今の時代こそ必要な税の知識と利益を生むしくみ①

2009年12月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

税理士が見たいのは鳩山政権の決算報告書

昨年末の流行語大賞でも話題になった、「政権交代」や「事業仕分け」。
私は旧郵政省に勤務していたときに、予算関係の業務を行っていました。特に、かんぼの宿の予算策定に携わり、建設場所の選定なども行っておりました。そのときの経験からすると、事業仕分けは非常によいことだと思います。

しかし、それと同時に、事業仕分けの効果が今年の景気にどのように結びつくのかも気になるところです。

というのも、事業仕分けによって国の予算組みがあれだけ注目されたからには、その結果、つまり決算についてもしっかりと報告してほしいと期待してしまうからです。

そもそも、国の予算は過去の実績に物価上昇率をかけるなどの政策的意図があるのです。しかし、私が勤めていたころから、旧郵政省は人事異動が行われることもあり、過去の実績を把握している人が少ないのが実情でした。

旧郵政省に限らず、ほとんどの我が国の行政機関に当てはまることは、予算=決算という、一般の企業では考えられないことが行われていたのです。

このような状況で、健全な財政などできるわけがありません。そこにメスを入れている鳩山政権は評価に値すると思います。

皆さんもテレビでご覧になったと思いますが、仕分け人に過去の実績について突っ込まれでも、はっきりと答えられない官僚が多かったのは、そうした理由があるのです。

これまでぼんやりとしていた決算がどのように行われ、どこまで明確に報告されるのか、税理士としては、今から楽しみでなりません。

経営者にとって、決算書は会社の、そして自分の成績表だと思いますが、国の事業が今年度の景気にどの程度結びついたのかを知るためにも、同の成績表にも注目していただきたいと思います。

講演の最後で、利益を生み出すための決算書の分析方法も紹介しますので、自社での活用と併せて、国の成績表もチェックしてみてください。

つづく

講演会のお知らせ:清話会セミナー

下記の内容でセミナーの講演を行います。聴講をご希望の方は当事務所までお問い合わせください。

清話会セミナー

清話会セミナー

「企業サバイバル時代を乗り切るために」連続セミナー【第5弾】

日時 2009/12/3(木)14:00~15:30

テーマ  今の時代こそ必要な税の知識と利益を生む仕組み
   ――知らないと損をする、ちょっとした工夫を見逃すな

講師 佐伯 優 (佐伯優税理士事務所所長)

会場 東京学院3階教室
  ※ JR水道橋駅西口徒歩2分

参加費 会員無料(会員証提示)
一般有料 事前申込:4800円
当日参加:6000円(詳しくはこちらをご参照下さい

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