清話会セミナー’11年06月:講演要旨①

発展する会社・お金を残す節税とは

2011年6月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

税制改正大綱にみる国の思惑と税収増

現在、日本の財政状態はかなり厳しい状況にある。60兆円あった税収は40兆円にまで減少した。この先、日本が前進するには税収を上げざるを得ない。3月に東日本大震災が発生し、見通しははっきりしないが、税制改正が増税となるのは間違いないだろう。

改正内容を考えるうえでヒントになるのは、国が発表済みの「平成23年度税制改正大網」(改正に向けた中間報告)だ。震災前につくられたものだが、どんな内容だったのか。

まず、与党が選挙に失敗したため、消費税については触れていなかった。
法人税率は5%下げることを示唆。一見喜ばしく聞こえるが、よく読むと違う。国は法人税収を減らしたくないので、税率は下げながらも、同時に減価償却の範囲を狭めて課税対象となる収入は確保しようとしたのだ。結果的には減税とは言えず、横ばいか増税になることもあり得る改正のようだ。相続税は増税する方針が示され、一方で贈与税は一部緩和し、贈与したくさせている。

現在の日本人の平均寿命は80歳前後なので、資産が親から子に渡るのは、子が60歳ごろというケースが多い。そうではなく、消費に積極的な30〜40代のうちに、子にお金が渡るようにして、どんどん使ってもらい、税収入につなげたいというのが国の思惑だ。

相続税はかなり高くなるようだ。これからの節税を考えるうえで、この相続と贈与をよく知ることが重要なポイントとなる。

所得税については、従来制度では収入が増えるほど控除額も増えていた。改正案ではこの上限が提示された。年収1500〜2000万円以下の収入の場合は一律245万円控除される仕組みが検討されている。2000万円を超える収入のある場合はそこから減額されていき、年収4000万円以上だと一律125万円しか控除されない。245万円の約半分。高収入者には厳しい改正となる。

役員報酬もさらに厳しくなった。役員を務め年収2400万円のケースで計算してみると、現行と比べて年間46万5000円もの増税となる。4000万円を得る場合、この倍になるという計算である。もしこの大網が現実のものとなったら、役員報酬の中身については、再考すべきかもしれない。