清話会セミナー’13年07月:講演要旨③

【講演名】「生前贈与」から採る賢い相続税対策

2013年7月に清話会にておこないました講演の要旨をまとめました。

生前贈与から考える相続税テクニック

構成:今野靖人(清話会)

フル活用したい贈与の非課税枠

贈与等による財産の移転も、大きな節税手段となる。

代表的なのは贈与税の非課税枠の活用だ。贈与後3年以内に被相続人が亡くなるとその金額は相続税に加算されるが、非課税枠は贈与した時点で非課税が確定する。

最もポピュラーな方法である暦年贈与は、受贈者1人につき毎年110万円(基礎控除)まで贈与税がかからない。忘れてはならないのは、贈与の記録をきちんと残しておくこと。また、入金された預金通帳や印鑑を贈与した人自身が管理していると、贈与したとは見なされない。贈与に際しては贈与契約書を作成するとともに、通帳・印鑑は贈与を受ける者が、管理・保管しなければならない。

2人の子が1億円を相続すると5800万円が課税所得となり、1040万円の相続税が課される。この場合に、仮に子とその配偶者など、暦年贈与の対象者が合計9人いるとしよう。非課税枠の110万円を9人に贈与すれば、1年に990万円の課税財産を減らすことができる。

贈与しなかった場合の相続税の5800万円をゼロにするには6年かかる計算だが、それでは期間が長すぎるので、多少の贈与税を払ってでも3年で贈与を完了しようと思ったら、9人に毎年215万円ずつ贈与すればいい。年間110万円の枠を超えた105万円に対しての課税は、最低税率の10%で済む。総額283万5000円を納税することによって、贈与しなかった場合よりも1040万円もの節税となるわけだ。

こうしたことを実行するためにも、早期からの対策が必要なのである。

結婚期間が初年以上の配偶者には、居住用の土地建物を2000万円まで非課税で贈与できる制度もある。ただし、この贈与は生涯に1度しか認められない。

住宅取得資金支援の贈与が非課税となる特例措置は、父母または祖父母(直系尊属)から住宅取得等資金の贈与を受けた子・孫が一定の要件を満たした場合、その資金の一定金額について贈与税が非課税になる制度だ。受贈者の子や孫には年齢制限があり、贈与年の1月1日に20歳以上、贈与年の合計所得金額が2000万円以下でなければならない。

この非課税限度額は、平成25年は700万円(省エネ住宅は1200万円)、平成初年は500万円(省エネ住宅は1000万円)。ただしこの特例は平成部年をもって終了するので、措置を活用したい人は手続きを急いだほうがいい。なお、相続時精算課税制度を併用して住宅資金3500万円を贈与した場合は、将来の相続時に精算されて贈与したときの金額で評価されることに留意が必要だ。